2019.10.08 / BLOG
AUTHOR / 桑畑 健
2019年10月8日火曜日に事業構想大学院にて開催された日本医療DesignCenter主催の研究会についてレポートをお届けします。今回はこれまでご縁のあった方のみの少人数での開催とさせていただきました。興味をお持ちの方はぜひ本記事の最後にあるご案内をご確認ください。
“は?! 医療をデザインする、だと?”
三々五々、19時30分の開始時刻前に会場に入ってきた参加者の顔には、そう書いてあった。
それはそうだろう。医療とデザインは、水と油とまでは言わないが、縁もゆかりもない間柄なのは確かだ。一体この両者に何の関係があるというのだ。なのにこの研究会では、こうした“?”に対して“アハ!体験”で答えようというのだ。
なんのこっちゃ、である。
研究会は、ファシリテーター役の日本医療デザインセンター代表理事のアイスブレイクから始まる。 「温かい拍手をください」と会場に要求しつつ、代表理事は「デザイン」とは「デザイン思考」のことであり、「デザイン思考とは、新しいアイデアの実施を通じて価値を創造すること」と紹介する。これを医療の領域で行うのが「医療デザイン」、というわけだ。代表理事に送られた拍手には、“アハ!”どころか“ハア?”というニュアンスのほうが大きいようだが、話はかまわず先に進む。
「デザイン思考とは、現状をよりよくするための筋道を考案すること」との紐解きのあとに、医療デザインの実践例ということでパネリストのトークセッションが行われた。
1組目が紹介したのは、医者として週3.5日働き、残りの時間はアーティストとして活動しているという体験談。ここでも“なぜ医者がアートを?”という空気が漂ったのだが、「医者は、患者の現状をよりよくしようと筋道を付けながら患者に接しているはず。それはすでにデザイン思考の実践では」という言葉が参加者の頭脳に刺さったようで、“なるほど”という表情を浮かべる人が目立ち始めた。
ここで威力を発揮したのが、おかわりフリーで用意されたアルコール飲料と、スマホを使った意見投稿システム『百人会議』である。なるほど、見回せば確かにパネラーの話を聞きながら、スマホをいじっている人が目に付く。決して退屈しのぎのゲームではない。『百人会議』システムを使って感想を投稿、それが会場内のスクリーンに大写しにされるのだ。「確かに医療はデザイン思考かもしれない」「しかし医療界は閉じている」「エビデンスがないと変わらないのが医療界」など、スマホを使った意見交換が行われていて、これが実に刺激的。もしかしたらこの意見交換こそが“アハ!体験”なのかもしれない。
『百人会議』システムを説明する薬師寺忠幸
会場が一番盛り上がったのは、2組目のパネラーの話だ。
潰れかけた中小医院を嫌々ながら継いだ二代目院長の告白で、泥沼の経営状態からいかにして抜け出したかという実に生々しくスリリングな体験談に、“人ごとじゃないぞ!”と誰もが身を乗り出すように聞き入ったのだ。
二代目院長は言う。「理念に立ち返ってすべてを見直したことが、立て直しのすべて」と。
そのプロセスは、ソリューションにつながる「着想」を得て、アイデアを「発案」し、「実現」していくという、デザイン思考の流れそのものでもあった。二代目院長の切実な体験談は、そうしたデザイン思考の本質を、実にストレートに語りかけてくれたのである。この夜、最も“アハ!”に近づいた瞬間であった。
その後、増え続ける独身女医を救うための「女医コン」の紹介が行われたところで、研究会は時間切れ。本来ならばこの後、参加者がいくつかのチームに分かれてディスカッションを行い、それがそのままデザイン思考を実感する“アハ!体験”となる予定だったのだが、その体験タイムは次回に持ち越されることになった。
締めくくりに代表理事が、男子トイレの便器にハエのシールを貼ったことで“飛び散り”防止に成功した事例を紹介。「ITを使ったり、お金をかけたりすることじゃない、大切なのはアイデアなんだ」というメッセージは、参加者の大きな笑いと共感、そして拍手を誘ったのだった。
今回の成果と課題を整理し、デザインで地域医療を活性し、医療分野の社会課題を解決していくために、以下のスケジュールで「地域医療デザインLab」を企画・開催いたします。
12月上旬:地域医療デザインLab@町田
1月下旬:地域医療デザインLab@都内
2月中旬:地域医療デザインLab@つくば
3月中旬:地域医療デザインLab@湘南鎌倉
また、医療業界に新規で参入・貢献したい方向けに2020年より「医療デザインゼミ」を開講します。
上記のLabの開催ですが、2020年1月3日現在まだ確定しておりません。
有言実行できずに申し訳ございませんが、現在開催に向けて鋭意企画を進めております。確定次第、詳細は当ウェブサイトおよびfacebookページにてご案内していきます。
Writer : Masahiko Tango
Photographer : Hidetake Ohata
Graphic Recording : Mie Namimura
・女医コン(株式会社ドクターズインク)
・百人会議(株式会社Medtech JP)
・Glocal Government Rerationz 株式会社